日中藝苑
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(旧)日中藝苑ギャラリーについて(2022年12月に移転しました)
西宮の名塩地区は、伝統的な住宅のほか、山林の土地開発が行われ一戸建てが立ち並ぶ住宅地があれば、機能的なマンション群も多く、鉄道やバス等の公共交通機関も充実しています。
ここに約40年前に開発された名塩ガーデンがあり、1970年代に普及し始めた初期のプレハブ住宅も数多く見られます。これらの住宅は鉄骨構造の上に当時の新しい建材が組み立てられてできたもので40年の歳月を経てもなお面目躍如たるものがあり、元からの頑丈なつくりは健在ですが、長期間にわたり空き家になっている場合は内装が古く、電気設備等も老朽化しているため、現代日本の若い人たちには人気が出にくいと言えるかも知れません。
約280戸の規模をもつこの名塩ガーデンも、高齢化が進み、近くの名塩平成台と比べると、歩いて10分程度の距離にありながら、かなりの違いが出てきたようです。平成台は若い世代の住民が比較的多いのに対し、名塩ガーデンは年配の住民が多く、どちらかと言えば若い人ほど気軽には外出しにくい人もおられるように見受けられます。
しかしここはその名の通り、豊かな緑に囲まれ、地価も手ごろです。そこで我々日中藝苑は、ここで空き家を購入し、住宅を利用した家庭的な美術館を開設したいと考えました。老朽化した内装や設備を補修して極力元の姿を復元することで、40年前の日本の一戸建て住宅と庭の木々自体が歴史を物語る一つの作品になると同時に、日中藝苑創作センターの作品を地元の住民向けに展示すれば、年配の住民の皆さんにとってもすぐ近所で中国の書画作品を鑑賞できる一つの窓口が提供できると考えたのです。
2016年7月に希望に見合った空き家を買い受けることができ、元の家主さんに1ヶ月余りかけて家の中の品物を整理して頂いた後、我々は改造に着手しました。室内で必要となる家具等は可能な限り西宮市西部処理センターリサイクルプラザからもらい受け、数ヶ月かけて自力で改造した結果、ほぼ元の姿をとどめた形で使用が可能な状態に戻すことができました。
この建物には2つの機能があります。第一に、日本に来た中国の芸術家たちが、1970年代に建てられた日本の住宅の内情に近距離で触れることができること、第二に、ベランダの下にあり元は半分露天であった駐車スペースを利用して「博山陶芸」と名付けた陶芸工房に改造し、そして住宅の居室内を藝術作品展示室にしたことです。
今年9月には「日中藝苑ギャラリー」として正式に開館し、西宮ギャラリー連絡会の会員として2017年度の「西宮ぎゃらりーさんぽ」というイベントに参加させて頂く運びとなりました。
空き家を有効利用するための試みとして、その最終的な結果はまだわかりませんが、少なくとも創意工夫して空き家を利用することは、まだまだ利用可能な資源の浪費を大幅に減らすことにつながり、広く見れば人類の将来にささやかな貢献ができることにもなるのではないでしょうか。 (陸建洛 2017年7月)
日中藝苑ギャラリー
博山陶芸